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≪レイバーノーツ大会レポート ③   サービスモデルから組織化モデルへ≫

≪レイバーノーツ大会レポート ③サービスモデルから組織化モデルへ≫

 

 大会初日のワークショップ「労働組合の方向性を変える サービスモデルから組織化モデルへ」に参加しました。

ワークショップではパネラーが三人(医療、自動車、教員)で、10分位ずつ発言し、その後は司会の投げかけや、会場からの質問・意見に対してのディスカッションでテーマを深めていくというやり方でした。【写真は会場の様子】

 

「サービスモデルから組織化モデルへ」とはどういう意味か。

言い換えれば「役員請負の活動から組合員一人一人の力を発揮できる組合活動へ」と転換しようということです。

一部の役員や専従者が請け負って忙しくこなしていく活動ではなく、遠回りに見えても、手間暇がかかっても労働者に声をかけ、話を聞き、立ち上がる労働者を励まし、活動のスキルを伸ばすトレーニングを支援する。

そういう活動を重視しよう。

そうしてこそ運動は拡がるのだと。

 

4点について、以下解説します。

1,組織化モデルは「手間と時間がかかる」

パネリストの医療ワーカーは、新卒で就職し、組合にも入ったしストにも活動にも参加しました。

しかし、「これではだめだ」と思ったそうです。

レイバーノーツに参加し、その手法を使って彼女は2年かけて職場で同僚との対話を積み重ね、チームをつくりました。

そして4年後に彼女の所属する労働組合が変わったといいます。

彼女は「この積み重ねが組織を強くする。」と発言していました。

 

一見、役員が様々な活動を請負ってしまったほうが目前の課題解決はスムーズかつスピーディーに進みます。

しかしそれは組織を発展させる土台づくりを放置してしまっている場合が多いのではないでしょうか。

土台をつくる活動には手間と時間がかかることを私たちはもっと自覚するべきだと感じました。

 

2,相手の立場に立った視点

「労働者がやる気がない」と嘆くのではなく、役員が労働者の立場に立って対話のできる環境をつくることが大切だと学びました。

家事ワーカーの労働組合をつくろうとしたとき、オルガナイザーは家事ワーカーに会いに行き、アンケートを書いてもらい、スタディーグループへの参加を呼びかけます。

アンケートで要求や実態を把握し、研究者の協力も得ながら調査結果は「政策提言」へも活用します。

ここまでは日本でもよくやられている運動ですが、ここから先が重要だと感じました。

 

まず、労働者同士がいかに参加しやすい状況を作るかが重要だといいます。

参加してくれた労働者には交通費や食事も提供します。

さらに、安心して話ができる環境に配慮し、スタッフの態度やスペースの雰囲気も「心理的安全性」を配慮して準備します。

そうして個々に集まってくれた労働者がグループをつくり、トレーニングをしながらユニオンが誕生していきます。

 

心理的安全性のある「空間をつくる」とは、「管理とは全く異なる空間をつくる」ということだと言います。

管理とは、「ボスと部下」の関係です。

日々そういった関係性の中で働き生きている労働者が団結しようとするとき、そうではない空間をつくることが大切だとの指摘です。

これは、ブラジルの教育・哲学者のパウロフレイレの提唱する「対話的行動」に通ずるものがあります。

 

「オルガナイザーは、一人一人に家族のような温かさをもって接しよう。声をつぶさず、声をpowerに変えよう」との呼びかけが心に響きました。

 

3,私は「コーチ」なのか「選手」なのか

パネリストの一人、67歳の教員の話が印象的でした。

「私は20年以上ここで働いてきて、様々な経験をしている。常に新人と話をすることを大切にしていて、自分の経験を若い人たちに伝え、そして若い人たちの意見を聞くようにしている。」

「実行するのは若い人たちだから、私は支援に徹底する。だから私は『コーチ』と呼ばれている。実際の選手は若い人たちだから」

 

これは必ずしも年齢による区分ではないと思いました。

各々の役割の問題であり、私は「コーチ」なのか「選手」なのか。

その都度立場と役割は変わるかもしれませんが、その自分の役割を自覚して、労働者と対話することが重要だと思いました。

労働運動を現場で起こしていく労働者(選手)を増やしていくためには、優秀なコーチがたくさん必要です。

まずは自分の役割を自覚し、その役割を担えるスキルを磨きながら活動していくことが重要だと思いました。

 

4,意見を聞くことを恐れない

「メーデー初参加でどう思いましたか?」「今日の会議はどうでしたか?」

役員は、自分の指揮した会議運営や取り組みに対して率直な感想を聞くのは怖いものです。

しかし、聞くことによって、そこに運動のエネルギーの源泉があることに気付き、運動の発展の道が見えてくるのではないでしょうか。レイバーノーツで見聞きした活動家の経験は、このことを確信させるものでした。

恐れを乗り越え、「どうだった?」「どう思った?」と率直な声を聞くようにしていきたい。

 

以上、4点を紹介しました。

いずれも、サービス型(役員請負)よりも時間と手間がかかることは間違いありません。

しかし、それが労働運動発展のカギであるということを強く実感します。

あとは私たちがその手間と時間をどう確保し、実践するのかにかかっています。