厚生労働省は、6月31日「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況」をまとめ、公表しました。夕方のニュースでも報道されていたのでご覧になった方も多いのではないでしょうか。
私たち労働組合は、集団的労使交渉(団体交渉等)によって諸問題の解決を図ろうと日々活動をしていますが、「個別労働紛争解決制度」は、労働組合の関与しない、個々の労働者と事業主との間のトラブル防止、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」「助言・指導」「あっせん」の3つの方法があります。2020年度の総合労働相談件数は129万782件で、13年連続で100万件を超える状況が続いていることが報道されました。
「いじめ・嫌がらせ」が最も多く全体の22.8%
その中で、主な相談内容は、「いじめ・嫌がらせ」、「自己都合退職」、「解雇」、「労働条件の引き下げ」、「退職勧奨」と多岐にわたりますが、2012年度以降「いじめ・嫌がらせ」が最も多くなり、2020年度も79,190件(全体の22.8%)を占めるようになりました。
2020年6月より大企業において、パワーハラスメント防止措置が事業主の義務となり、2022年4月1日から中小企業にも義務化されます。形式的な対応では、いじめや嫌がらせは防止できません。また、パワーハラスメントを防止するためには、経営者だけでなく従業員の意識を高める必要があります。労働組合としても、研修会や啓発活動を経営に求めるとともに、自らも企画するなど、取り組みは早めに進めるようにしましょう。
そして何よりも、ハラスメントが発生する根本原因に目を向ける取り組みも重要です。なぜハラスメントが起こるのか、対処だけでなく、根本的な労働条件・職場環境の改善が労働組合にも求められています。
精神疾患での労災認定が過去最多
一方で、厚生労働省は6月23日、過労や職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症したとしてに労災認定された人は、2020年度は過去最多の608人になったと発表しました。
一般的に精神疾患での労災認定は難しいといわれています。心の病は「その原因が業務にあるのかどうか(業務起因性)」を証明することが困難であり、長時間労働などの「具体的事実」の有無が認定の成否を分けるとるといわれています。コロナ過で残業などの長時間労働が減少している一方、ハラスメントなどによる労災認定が増加している背景には、労働現場に過去に類を見ない深刻な事態が生まれているかの表れではないでしょうか。
労働組合の役割が求められています。
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