今の社会の特徴は「多様性」。
そのような社会の中では「こうあるべきだ」「昔からこういうものなんだ」という簡単な説明ではもはや納得を得ることは難しい。
あらゆる価値観が変化し、多様化されている中で、「当然共有されている」と思っていたことが、実は共有されていないことに頭を悩ませた経験が誰でもあると思う。
そんな社会の中では、「なぜこれをするのか」「なぜこのやり方なのか」を丁寧に一から問い直す作業が求められている。
労働組合の活動の在り方も、例年行事として同じプログラムのコピペでこなしていく運動を見直さなければいけない。
このことは、現場の人間は皆感じている。
しかし、現実は日々の仕事や活動、プライベートも含めて忙しい。
「とりあえず例年通りに」という活動スタイルが残念ながら定着してしまっている。
みんな気が付いているけど、踏み出せない。
この状況をどこかで切り替えないといけないと思う。
「伝わる」労働運動をつくるために
もはや「こうあるべき」「こうでなくてはいけない」という発想を、取り払うことから始めたい。
もちろん法律を犯してはいけないことは当たり前だが、
「法律に違反しないのであれば自由にやってみよう」くらいの姿勢が、多様性を掘り起こす鍬になると思う。
そう簡単にはいかないけれど、労働組合という広大な土地に鍬を入れ、耕す作業を始めたい。
神奈川で始まってから2年ちょっとの「サウンドカー」というデモの形は、だいぶ定着した。
神奈川・横浜の労働組合がサウンドデモを取り入れたのは2017年3月4日の県民集会。
そのあと5月のメーデー、7月の最賃引き上げダンプデモ、2018年も同じようにと2周した。2年ほどの実績しかないが、神奈川の労働運動に大きな変化が生まれている。
サウンドデモは「新しい運動はこうあるべき」というメッセージを発していたわけではない。
従来の労組のデモが古くて、サウンドデモが新しい。
そういうメッセージを発していたわけではない。
発したかったメッセージは、「自分たちでやりたいことを、やりたいように、伝わるように工夫しながら挑戦していいんだ」というメッセージ。
トラックの上に乗車し、大音量で音楽を流し、自分の言葉で語りかける。
「こういうやり方もあるんだね」というメッセージを伝えることを大切にしていた。
その中で、医労連青年部がサウンドカーに乗り込み、一緒にデモの先頭を走った。
そして、「次は自分たちでもサウンドカーをつくりたい」と、2018年メーデーでは第5梯団でオリジナルサウンドカーを運行した。
全国一般保育所分会は県民集会で「桃太郎のコスプレ」で沿道の市民に呼び掛けた。メーデーでは替え歌を流しながら「コスプレ×音楽」でバージョンをアップさせて訴えた。
それぞれ「完成度はまだまだ不十分」かもしれないが、
でも、自ら工夫をしてアピールしたことに価値を見出しだしたい。
挑戦できて楽しかった。
次はもっとこうしたい。
こういう思いをもっと広げたい。
流れる音楽は「ラップ」でなくても、アニソンでも、演歌でも、クラッシックでもいい。ドラえもん音頭だっていい。
トラックでなくても、ダンプカーデモ、しゃべるカーデモ、リヤカーでも、自転車でもバイクでも何でもいい。
大切なのは「何を訴えたいのか」「どうすれば伝わるのか」を一生懸命考えて、挑戦していくことだと思う。
「私の価値観は正しい。でもあの人の価値観も正しい」
「サウンドカーはうるさい」という事を言う人がいた。
うるさいという気持ちもわかる。
サウンドカーという手法を正しいと押し付けるつもりはないし、従来型の「シュプレヒコール」が好きな人がいてもいいと思うし、もっと優しく訴えたいという気持ちもとてもよくわかる。
ただ、「うるさい」とか「あればダメだ」と否定はしないでほしい。
「否定」は「黙れ」と言っているに等しく、沈黙と拒絶を生む。
「否定」ではなく、「承認」と「対話」を通じてよりよいものをつくる協同を広げてほしいと思う。
価値観は多様。
おそらく今の10代、20代、30代、40代、50代、は全く異なった価値観の中で生きている。
いや、世代でくくることもできないほど、多様性で満ちている。
「私の価値観は正しい。でもあの人の価値観も正しい」この社会の中で発展していくためには、お互いの価値観を認め、活かしあうことが必要不可欠であり、それが労働組合にとっても発展の要となると思う。
今年もメーデーの準備が始まった。
昨年よりももっと良いものにしたい。
もっと「伝わるデモ」にしたい。
2019年5月1日(水・祝)10時~
会場:沢渡中央公園
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