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労働学校受講生の寄稿~「論点を絞る」ということ~

≪寄稿~「論点を絞る」ということ~≫ 

横浜地区労と学習協が取り組んだ「第133期横浜労働学校」が3月8日(土)に開催されました。

今回、労働学校初参加となった横浜地区労の常任幹事であり、大学等教職員組合の織田さんに感想を寄せていただきました。

 

 

「論点を絞る」ということ

 学生にもよく言うのだが、レポートを書こうとするのなら、何よりも論点を絞ることが大切だ。

 具体的に何に注目するのか。なぜ、それが大切だと考えるのか。最終的に何が言いたいのか。なぜ、そのように考えるのか。あれこれ欲張ると失敗する。読み手に最も伝えたいことを中心に据えるべきだ、と。論点が明確で、順序立てて推論しているレポートは、結果的に説得力があり、読んでいて面白い。そして今回の労働学校、この「論点を絞る」ということのお手本のような講演だった。

 たとえば、経済学の江口健志氏。「経済」という広大無辺なフィールドの中から、彼が絞った論点は「新自由主義」だった。ここ10年以上話題となっており、今また岸田首相がそこからの脱却を宣言し、その実何も変わっていない新自由主義、そして「新しい資本主義」。正に今、我々が最も知っておかねばならない事ではないか。

 半年あるいは1年かけて体系的に学生に教えることも重要だが、この労働学校は正に一期一会の一発勝負、受講者も様々。そんな一時間でここに論点を絞ったのは、見事と言うしかない。内容もコロナ問題を「つかみ」にしてそれと新自由主義との関係、そして新自由主義の根本からその限界へと展開し、終わってみれば新自由主義についてけっこう体系的に理解できるという、これまた見事な展開だった。

 そしてそんな新自由主義のはびこる現実をどうやって理解するかに論点を絞ったのが哲学の長久啓太氏、それをどう変革するかに論点を絞ったのが階級闘争論の杉井静子氏というわけだ。一日の構成としても、実に見事ではないか。

 学んだことはまだある。それは、人に何かを伝えるときは自分をさらけ出せということだ。江口氏は情熱的に、長久氏は自分の人生を振り返るような口調で、そして杉井氏はいかにも弁護士らしく淡々と。三者三様ではあるのだが、それぞれが自分の個性を出すことで、伝わってくるものもあるし、真剣に受講しなければという気にさせられるし、結果的に面白い。それが自己表現ということであり、自分を大切にするということではないのか。そして仲間に語りかけ、話し合いで運動を進めていく我々にとって一番大切なことではないのだろうか。

 そんなわけで、実に学ぶことの多い一日だった。講師、主催者、そして共に受講した仲間に深く感謝したい。そして個人的には、いつかこういう場でこういう講義ができるよう、さらに学習を進めて行かねばと思っている。

大学等教職員組合 織田和家